相続の基本編よくあるご質問

相続はどういうことですか?

「相続」とは生前の贈与ではなく、亡くなった人(被相続人)の財産を遺された人たち(相続人全員)に一定の割合(法定相続分又は遺言による指定相続分、遺贈による配分)で引き継ぐことをいいます。相続は、被相続人が死亡したとき(または失踪宣告を受けたとき)から開始されます。
相続する財産(遺産)が一定の非課税枠や控除額を超えると、相続税の申告納付対象になり相続人全員に納税義務が発生します。
厚生労働省の平成27年の人口動態推計では、日本人が1年間に死亡する人数は約130万人です。この数字には死産や若年者も含まれていますが、人が亡くなれば相当数の相続が発生します。
遺された財産の多寡にかかわらず、相続のルールを無視して特定の相続人だけが勝手に遺産を相続したり処分することはできません。

被相続人とは誰ですか?

「被相続人」とは亡くなった人で、財産(遺産)を配偶者や子・親・兄弟等の相続人となる人に相続する人です。

法定相続人は誰がなりますか?

原則として、「法定相続人」は被相続人の夫や妻である配偶者、子や孫・父母・兄弟までの範囲でなりますが、相続人には優先順位がありますので全員ではありません。
また、そのなかで「相続欠格・相続排除」となる人は除外されます。

相続欠格となるのはどういう人ですか?(重要)

「相続欠格」は、相続を自分が有利になるために詐欺や脅迫などの犯罪を犯したり、遺言書を偽装・隠匿した場合になり、相続人としての資格がはく奪されることです。
ただし、相続欠格した相続人に子がいれば「代襲相続」ができます。

相続排除となるのはどういう人ですか?

「相続排除」は、被相続人を虐待したり、重大な侮辱を与えたり、著しい非行があった場合に、被相続人の意思で相続の権利をはく奪できる制度ですが、被相続人の生前の申し立てにより家庭裁判所で認められることや、被相続人の死後に遺言執行者が遺言により申し立てをすることが条件になり、必ずしも認められるわけではありません。
ただし、相続排除された相続人に子がいれば「代襲相続」ができます。

代襲相続とは何ですか?(重要)

被相続人の実子が既に死亡していて、配偶者の胎児や他家に養子に出した実子・養子縁組をした子・認知された婚姻関係外の子が存在しない場合に、被相続人に孫(実子の子)がいれば孫が相続人となり、孫が死亡していればひ孫にと、死亡した実子の子孫に相続されることを「代襲相続」といいます。

法定相続分とは何ですか?

民法の詳細な規定で定められた一定の割合で、法定相続人が法定相続により分与された遺産を「法定相続分」といいます。遺言等で亡くなった被相続人が相続人に対する遺産配分を決めていなかった場合に、民法が定めた割合で遺産を配分します。
「法定相続」は「遺言」の補助的なもので、「遺言」は「指定相続」となり「法定相続」より優先した効力をもちます。

法定相続分の割合はどのくらいですか?(重要)

配偶者は常に相続人となり、子がいない場合は父母へ、子も父母もいない場合は兄弟姉妹へという順番で相続されます。配偶者も子も父母もいない場合は、兄弟姉妹へ相続されます。
異母兄弟姉妹や非嫡出子も含めると、相続順位と割合の組合せはかなりのパターンがあります。
以下は、法定相続分の割合の代表的なケースです。
①配偶者と子の場合:配偶者1/2+子1/2(子で等分)
②配偶者と父母の場合:配偶者2/3+父母1/3(父母で等分)
③配偶者と兄弟姉妹の場合:配偶者3/4+兄弟姉妹1/4(兄弟姉妹で等分)
④配偶者と兄弟姉妹の場合:配偶者3/4+兄弟姉妹1/4(半血兄弟の場合はその1/3)
※法定相続の優先順位:配偶者>子(孫)>父母>兄弟姉妹となります。

指定相続分とは何ですか?(重要)

遺言によって相続人への相続割合を指定することを「指定相続」(民法第902条1項)といい、指定相続により分与された遺産を「指定相続分」といいます。不動産などを個別に相続させることが出来ます。「遺産分割の指定」(民法第908条)も兼ねる場合があります。

遺言とはどういうことですか?(重要)

「遺言」とは、将来被相続人となる遺言者が生前に、所定の内容を記載した遺言書により、相続財産の割合や相続人を指定することです。遺言執行者を選任することができます。決められた内容が無いと有効になりません。遺言は「指定相続」であり、「法定相続」よりも優先します。
遺言の仕方には、普通方式の遺言書と特別方式の遺言書があります。普通方式の遺言書には3通りあり、「自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言」があります。
特別方式の遺言書は、死亡の危急に迫ったような緊急時や外界と隔離されている船上や、伝染病で隔離されているような特殊な状況の人が書く遺言書になります。(民法第983条)口授で代筆することができ、ケースごとに2~3名の証人の立会いで行う遺言です。
その他、「遺言信託」や「成年後見制度」・「家族信託」と呼ばれる方法もあります。

遺言は何歳からできますか?

 遺言は15歳以上になれば、単独で行うことが出来ます。(民法第961条)ただし、遺言の内容を理解してそれを表現できるだけの精神能力が必要です。(民法第963条)
また、「後見」「保佐」「補助」の手続きが開始されているだけでは、取り消すことが出来ません。(民法962条)そのため、この手続きが開始されても、取り消すためには精神能力をもっているかいないかを個別に判断する必要があります。

自筆遺言書とはどういうものですか?

「自筆遺言書」は、遺言者単独で必ず全文自筆により書いて日付署名捺印します。(民法第968条)これは費用がかからず手軽に作成できますが、最新日付が有効で所定の内容が無いと無効になります。また、家庭裁判所の検認手続が必要で、検認の無い開封は過料5万円となります。

公正証書遺言とはどういうものですか?

「公正証書遺言」とは、遺言者が公証人役場に行き公証人に遺言内容を伝えて、公証人は遺言者から聞いた内容を遺言書に記述するという共同で作成する遺言方法です。
メリットとしては、公証人が作成するので内容に不備がなく正確で有効となり、家庭裁判所の検認が不要です。
デメリットは、作成時間と費用がかかり、他人の証人2名の立会いが必要なことです。

秘密遺言とはどういうものですか?

「秘密遺言」とは、遺言者が遺言の内容を誰にも知られたくない場合に利用する遺言の方法で、遺言者が自分で書いた遺言書を公証人役場に持って行き、間違いなく本人のものであることを明確に証明できるものです。
メリットとしては、遺言者本人の明確化と遺言内容を秘密にできることです。
デメリットは、公証人も遺言内容が確認できず不備が残る可能性があり、家庭裁判所の検認手続が必要なことです。

遺言信託とはどういうものですか?

「遺言信託」とは、信託銀行や弁護士・司法書士が遺言の作成及び執行に関する受託業務を行うことをいいます。これは、遺産管理やサービスがともなうため報酬が発生します。
信託銀行のサービスは、遺産の一部または全部の信託財産を受託して遺された老妻・病弱者・障害者などの特定人(受遺者)の生活安定のために管理・運用することが中心です。
本来は、学術・教育等の公益のために不特定多数を受益者とする公益信託を目的としました。

家族信託とはどういうものですか?

「家族信託」とは、財産を持つ人が自分の老後や介護等に必要な資金の管理を行う際に、所有する不動産や預貯金等の財産管理を信頼できる家族に託して、その管理・処分・支払等を任せることです。
本人の意思が反映しやすく、成年後見制度のように家庭裁判所への報告義務が無く費用がかかりません。子も親の財産管理がしやすく、親が委託者兼受託者・長男が受託者とすることで老後の資産管理を長男に任せることができます。

成年後見制度とはどういうことですか?

「成年後見制度」とは、認知症等で判断能力が不十分な方を法律で支援・援助する制度です。これには、「法定後見」と「任意後見」の二つがあります。
「法定後見人」は、家庭裁判所から選任された人がなります。本人が誰になってほしいか希望を伝えることが出来、本人の子・兄弟姉妹等の親族が選任されるケースが多いのですが、知識面や管理面の事情により司法書士・弁護士等の専門家が選任されることもあります。
「任意後見人」は、公正証書による任意契約で依頼された第三者か遺言者本人の親族が後見人として選出されます。通常第三者は、トラブル防止のため司法書士・弁護士等の専門家が選任されます。
「任意後見制度」での家庭裁判所の関与は、本人があらかじめ選任しておいた任意後見人を家庭裁判所が選任した「任意後見監督人」を通じて監督するにとどまります。
「成年後見制度」は家庭裁判所への報告義務が毎年あり、財産の積極的な活用や生前贈与等の相続税対策の自由度が制限されます。

遺産分割とはどういうことですか?(最重要)

遺言が無い場合には、遺産は一旦法定相続に基づき共有状態となります。共有状態になった遺産を、各相続人に具体的に民法の規定で配分していく手続きを「遺産分割」といいます。
遺産分割には期限がありませんが、遺産の物または権利の種類及び性質と各相続人の年齢・職業・心身の状態及び生活の状況等の諸事情を考慮して配分を行う必要があります。
不動産や株式等の場合は、共有の遺産にすると処分の決定が複雑になります。そこで、例えば父親が亡くなったとしたら、母親には預貯金・事業を継承する長男には自社の株式・母親と同居する次男には自宅の土地建物をというように単独所有で現物ごとに分割することができます。
また、共有の遺産を売却して売却代金を分配する換価分割というやりかたもありますが、不動産の場合は譲渡所得税や住民税が課税されます。
さらに、相続人の一人が遺産を多く取得する代わりに、過不足分を他の相続人に対する現金の支払い等で清算するという代償分割という方法もあります。
この遺産分割を協議することを「遺産分割協議」(民法第907条1項)といい、相続で最も重要な部分を占めます。

相続はどういう方法で行いますか?(重要)

まず、「遺言書」が有るか無いかで変わってきます。 遺言書がある場合、遺言で遺産分割の内容が明確に指定されてあれば、被相続人の意思が尊重され、指定された人に指定された財産が相続されます。指定相続分の財産が一部の人にしか指定されていない場合、残りの財産は法定相続分で他の法定相続人が相続できます。
次に遺言書が無い場合ですが、相続のしかたは民法で詳細な規定が設けられ、被相続人の財産を相続できる人は民法で定められた「法定相続人」になります。法定相続により分与された財産を「法定相続分」といいます。ただし、相続人に遺言の内容が納得できない相続人がいた場合は、民法では「遺留分」によって一定の相続人が相続を保証されています。

遺留分とは何ですか?(重要)

「遺留分」とは、民法で定められた一定の相続人(配偶者・子・父母に限定)が、最低限相続が保証される遺産のことを言います。(民法第1028条)
例えば、「自分が死んだら第三者の他人に全部遺産を渡す。」という遺言書を作成されたら、遺族の遺産が侵害されます。そこで民法は遺留分で、遺族に最低限の遺産相続を保証しています。
遺留分を確保するためには、遺言書で相続した人に定められた期間内で「遺留分減殺請求」をする必要があります。

遺留分の割合はどのくらいですか?

①配偶者のみの場合:全体の1/2<残り1/2は遺言の指定相続分>
②配偶者と子の場合:配偶者1/4+子1/4=全体の1/2<残り1/2は遺言の指定相続分>
③配偶者と父母の場合:配偶者2/6+父母1/6=全体の1/2<残り1/2は遺言の指定相続分>
④子のみの場合:全体の1/2(子で等分)<残り1/2は遺言の指定相続分>
⑤父母のみの場合:全体の1/3(父母で等分)<残り2/3は遺言の指定相続分>
※兄弟姉妹には遺留分の権利がありません。

法定相続人は具体的に誰がなりますか?(重要)

「法定相続人」になれるのは、被相続人の夫や妻である戸籍上の配偶者、実子や実孫・父母・祖父母・兄弟の血族となります。ただし、相続人には優先順位があります。
子は、血族の実子のほかに胎児と他家に養子に出した実子、養子縁組をした子も含まれます。子が既に死亡している場合には孫が、孫が死亡している場合はひ孫という代襲相続になります。これらの年下の血族は直系卑属と呼ばれます。これに認知された婚姻関係外の子があり、非嫡出子と呼びます。
被相続人に直系卑属がいなければ、直系尊属の親や祖父母が相続人となります。直系尊属がいなければ被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。兄弟姉妹に異父母の子もいます。
相続の優先順位をまとめると、①戸籍上の配偶者、②直系卑属=実子・養子縁組の子・非嫡出子・代襲者、③直系尊属=親・祖父母、③兄弟姉妹・異父母の子、の順番となります。

内縁関係の相手は法定相続人になりますか?

法定相続人は被相続人の夫や妻である戸籍上の配偶者であり、内縁関係は認められません。
ただし、法定相続人が誰もいなくて「相続人不存在」の場合は、相続財産管理人の選任により内縁者から申し出があれば「特別縁故者」として家庭裁判所の審判により相続が可能です。

相続人がいない場合はどうなりますか?

相続人が誰もいない場合は「相続人不存在」となり相続財産管理人が選任されます。相続の申し出人がいないと最終的には国庫に帰属されます。
また、相続人の誰か一人が行方不明の場合は「失踪宣告」となり、家庭裁判所の審判で他の相続人に遺産分割されます。

相続権のない人に遺産相続ができますか?(重要)

遺言によって、法定相続人以外の相続権の無い人にも遺産を与えることも可能です。これを「遺贈」といいます。遺贈を受ける人を「受贈者」といいます。

遺贈とは何ですか?

「遺贈」とは被相続人が死亡した時に発生し、遺言によって遺産の一部または全部を相続人または相続人以外の受遺者へ無償で贈与することです。(民法第964条)
遺贈には、包括遺贈と特定遺贈があります。包括遺贈は、遺産の全部(債務も含めて)や全遺産に対する受贈者への配分割合(財産の1/4等)を示すことです。特定遺贈は、全遺産のうち特定の財産(Aの土地建物・Bのマンション・Cの株等)を示すことです。特定遺贈の注意点は、各個別の遺産を間違えず明確にすることです。

遺贈と相続の違いは何ですか?

「遺贈」は相続人以外の第三者にも遺産を渡すことが出来、「相続」は相続人だけに遺産を渡します。受遺者となるには被相続人との関係がかなり重要となり、愛人への遺贈は困難な場合があります。
相続人に対しては「相続」と「遺贈」は混同しますが、「遺贈」で相続人に「相続させる」ではなく「遺贈する」と明記することで相続人にも遺贈ができるとされました。(1991年最高裁判例)
相続人間の遺産分割協議は不要となりますが、遺贈の問題点は以下の通りです。
①遺贈による所有権移転は、遺言執行者または相続人全員の協力が必要。
②借地権・借家権の場合は、貸主の承諾が必要。
③農地の場合、農業委員会または都道府県知事の許可が必要。

相続したくない人はしなくて良いですか?(重要)

被相続人にプラスの遺産があれば良いですが、負債が全体の財産を上回り負の遺産となれば相続人が負債を継承することになります。個人の事情や相続人間の合意で、負の遺産を相続したくない場合や相続人の何人かが遺産を受け取らない場合は、全員もしくは何人かが「相続放棄」を選択することができます。
相続放棄するには、相続人が被相続人の死を知った時から3カ月以内に家庭裁判所に「相続放棄の申述」を行う必要があります。

相続開始を知った時から3カ月を過ぎたらどうなりますか?(重要)

相続を受け入れることを「相続の承認」といいますが、相続人が被相続人の死を知った時から3カ月過ぎてしまったら「単純承認」となり相続放棄ができません。
「単純承認」とは、被相続人の全財産で負債も全て無条件に引き継ぐことです。そのため相続財産の内容を把握していないと、遺産全体で負債が超過することもあります。

負債だけ相続せず他の財産を相続する方法はありますか?(重要)

残念ながら、負債だけを相続せず、他のプラスの財産だけを相続する方法はありません。

被相続人の負債がいくらあるか分からない場合はどうしたら良いですか?

相続を受け入れる相続の承認には単純承認のほかに、「限定承認」があります。
「限定承認」とは、被相続人の全財産の中でプラスの財産の範囲内で負債を引き継ぐことです。「限定承認」をするには、相続が開始されたことを知った時から3カ月以内に全財産目録を作成し、家庭裁判所に「限定承認の申述」を行います。この期限が過ぎると単純承認となりますので「限定承認」はできません。
「限定承認」は家裁から選任された「相続財産管理人」が、全資産と負債(債務)を管理します。
「限定承認」が認められると、公告や官報への掲載を経て財産の清算の手続きに入ります。清算の結果、プラスの財産が残ればその分を相続することが出来ます。反対に全体でマイナスになって負債が残ってしまってもそれを相続する必要はありません。

限定承認で注意する点は何ですか?(重要)

「限定承認」は、負債がいくらあるか分からない場合に有効ですが、相続人全員の合意が必要です。
限定承認をしますと、家裁から選任された相続財産管理人が、資産と負債(借金,債務)を管理し、管理人において資産を換金して負債(借金・債務)の返済に充てることになります。
限定承認をした場合、被相続人が相続開始日にすべての資産を相続人に時価で譲渡したものとみなされ、譲渡所得税が課されます。譲渡取得税は、譲渡価格(この場合「相続開始日の時価」)から取得費、譲渡費用を差し引いた額に課税されます。この譲渡所得税は、被相続人の債務となり、相続税の計算上債務控除の対象になります。また、この譲渡所得は、被相続人の準確定申告(相続の開始があったことを知った日から4ヶ月以内)する必要があります。
相続者全員の総意がないとできませんので、相続者全員を早急に集めて協議をし、相続が開始されたことを知った時から3カ月以内に全財産の目録を作成しなくてはなりません。また、知り得る限りの債権者に対して、限定承認を行う旨を伝える必要があります。
このように手続きや合意が複雑で困難なため、実務上はあまり利用されていません。

被相続人から生前贈与があった場合の相続はどうすれば良いですか?(重要)

被相続人から、住宅購入資金や事業資金を「生前贈与」された相続人や遺言により「遺贈」を受けた受遺者のことを「特別受益者」といいます。
「特別受益者」と他の相続人で同等の遺産分割を行うと、不公平が生じることになります。
そこで、「特別受益者」が「生前贈与」または「遺贈」された「特別受益分」を一旦時価で相続財産に含めて仮に計算して、仮の相続分を按分します。ここから前記の「特別受益分」を差し引くと、「特別受益者」の相続分が計算できます。
こうした計算では、「特別受益分」が相続分を上回ることがありますが、他の相続人の「遺留分」が侵害されない限りその場合の相続分は0となります。
ただし、被相続人が「特別受益分を相続財産に含めなくても良い。」という意思表示をすれば、相続分は減らされません。

遺言執行者はどんなことをするのですか?

「遺言執行者」は、相続手続きに関する一切の権限を有しており、法定相続的な財産管理や執行の権限を持っています。遺言の中で、相続人から指定もできます。また、遺言によってのみ指定できます。
「遺言執行者」が辞任する場合は、家庭裁判所の許可が必要です。遺言執行の任務を怠ると家庭裁判所は解任ができ、新しい「遺言執行者」を選任できます。
「遺言執行者」の指定が無いときは、相続人全員が「遺言執行者」と同じことを行います。

相続人の異母兄弟姉妹は相続人になりますか?

先妻の「異母兄弟姉妹」は、法律上の相続人になります。被相続人が先妻の異母兄弟姉妹には遺産を渡したくないという場合は、遺言により「後妻の直系卑属」に全部渡すようにしておけば、異母兄弟姉妹の遺留分請求があった場合を除いて遺産を引き継ぐことは可能です。
遺言がなければ、異母兄弟姉妹にも法定相続分が発生します。

複雑な相続対策をするにはどうすれば良いでしょうか?(最重要)

被相続人が生前に遺言で遺産配分の取り決めを行わず、法定相続分で遺産分割協議することは、相続財産の内容により配分の仕方が難しくなり、相続人間の争いの元になります。
そのトラブル防止対策として、あらかじめ「遺言書」を作成しておくことが有効です。
「遺言制度」は、満15歳以上でも親権者無しに遺言が可能です。(民法第961条)また、成年被後見人でも遺言内容やその結果生ずる法律上の効果を理解できる「遺言能力」を回復していれば、医師2名以上の立会いもとで遺言は可能です。(民法第973条)
本人が「自筆遺言」か「公正証書遺言」等の準備をすること以外に、内縁関係人や非嫡出子の存在を家族が事前に知り、財産目録を作成して財産の見落としが無いかを確認しておくことが重要です。

司法書士・税理士・不動産鑑定士・弁護士の役割は何ですか?

「司法書士」は、遺言書・遺産分割協議書の作成、戸籍謄本を辿った相続人の確認、相続放棄や限定承認の裁判所提出資料作成、成年後見人制度のサポートや後見人、遺言執行、相続登記等です。
「税理士」は、相続財産の評価や相続税の申告・納付を行います。不動産がある場合は、「不動産鑑定士」が不動産の正しい評価額を算定します。不動産鑑定士を伴う場合は費用がかかります。
「弁護士」は、遺産分割に関するトラブルの有料相談(相場30分で5000円以上)、家庭裁判所の調停や審判のサポートを行いますが、利害が相反する別の相続人の委任は受けません。

遺産分割協議の合意ができない場合はどうすれば良いですか?

遺産分割協議で相続人全員の合意が得られない場合は、「遺留分」の請求もできますがそれでも不服がある場合、最後の手段として家庭裁判所に調停を申し立てることになります。
調停委員の立会いで調停が成立すると、「調停分割」という「調停調書」による遺産分割となります。この調停が不成立の場合は、「審判分割」という裁判官の審判により遺産分割方法をとります。
ここでも不服があった場合は、2週間以内に即時抗告を行い「高等裁判所」での解決となります。 いずれの場合も、かなりの時間とお金と労力を費やします。

家庭裁判所の遺産分割の審判や調停は年間に何件ありますか?

厚生労働省の平成27年の人口動態推計では、日本人が1年間に死亡する人数は約130万人です。家庭裁判所の遺産分割事件の新受件数(審判+調停)は、平成24~26年の3年間ほぼ変わらず1万5283~1万5261件となっています。
この数字には死産や若年者も含まれていますが、高齢者に多い4大疾病で亡くなった人数は80万5千人となっています。相続が発生する人を100万人と推定しても、1.5%に当たる割合で審判や調停が行われている計算です。
当事者数は年々微減で、平成26年には平均4.6人となっています。
争った相続財産の金額は、1000万円以下のケースで30%以上、5000万円以下全体で見ると75%にのぼります。逆に、5千万~5億円で18%、5億円超では1%となり、かなり少なくなるのが特徴です。これは、相続に対する意識が高く、相続対策が講じられているからだと思われます。
このように、相続のトラブルは財産の多さや金額との相関性がなく、むしろ相続に対する意識の欠如や対策の不備が原因で、普段の心構えの差であると思います。
なお、審理期間は平均12か月前後(民事全体平均8.5カ月)と長期です。

相続税の申告と納付期限はいつまでですか?(重要)

相続は、被相続人が死亡したとき(または失踪宣告を受けたとき)から開始されます。
相続税の申告と納付期限は、相続人が相続の開始があったこと(死亡したとき)を知った日の翌日から10カ月以内となっています。申告書提出の期限と、相続税納付の期限は同じです。
金銭による全額納付が原則ですが、延納や物納になる場合は申告書提出と同時申請が必要です。
延納は、不動産の割合により期間と利子率が変わりますが、およそ1%前後の利子税が付きます。
物納の申請は、物納できる不動産が流通性の高いものに限定されてしまうことや、財務局自体が消極的なため近年難しくなっています。
相続税の申告と納付は、1通の申告書に相続人全員が署名・押印し、被相続人の住所の管轄税務署に行います。申告書は1枚ですが、全財産・負債・遺産分割等に関する付随書類が必要です。
なお、被相続人が死亡した日までの所得があった場合は、死亡から4カ月以内にその年の所得税申告をします。これを「準確定申告」と言います。

相続税の申告と納付の期限までに相続登記も必要ですか?

相続登記の申請に期限はありません。相続登記が未了であっても差し支えありませんが、以下のような問題が起こる可能性があります。
相続した不動産を売却する場合、引渡しまでに相続登記が完了しなければ所有権移転登記が出来ません。また、相続人が死亡したり行方不明になった場合は相続人が被相続人に代わり、その後の遺産分割の問題や相続登記に必要な書類が揃わなかったりして準備に時間がかかります。
逆に、遺産分割協議書が早期に完了し法務局で先に相続登記を済ませると、戸籍の証明書類の原本が返却されますので相続税の申告に利用できます。税務署は申告に添付した戸籍の証明書類の返却いたしません。

配偶者控除はいくらでその効果はどうですか?(重要)

配偶者控除は、法定相続分(遺産全体の1/2)と1億6000万円のいずれか多い方が控除できます。遺産全体で1億6000万円までであれば、配偶者が100%相続すれば全額控除が出来ます。
しかし、配偶者控除は基礎控除との合計で効果が出るため、配偶者控除を全額使ってしまうと一次相続で基礎控除の効果が無くなり、二次相続で相続額が多く残った上に基礎控除が一人分減ります。
そのため、一次より二次の相続税総額が、逆に増えてしまうということがあります。
ここでは税務の専門的な説明は省略しますが、1億6000万円の遺産の場合、配偶者控除を1/2利用するのと全額利用では、一次と二次合わせた相続税総額が約1.5倍の差になります。
配偶者控除は、基礎控除の納税資金が無い場合などの緊急避難措置や、土地建物を配偶者が住居として亡くなるまで使用する場合に効果が出ます。時間稼ぎの方法と捉えた方が良いでしょう。
なお、配偶者控除は、相続人が相続の開始があったこと(死亡したとき)を知った日の翌日から10カ月の相続税の申告・納付期限までに遺産分割が決まらないと受けられません。
遺産分割協議が進ない場合は、とりあえず法定相続分で相続税の申告・納付を済ませ、申告期限から3年以内に「更正の請求」を行うことでこの特例の適用が受けられ差額が還付されます。

相続が発生したらまずどうすれば良いですか?(重要)

以下は、相続対策が完了した前提で、手続き上の実務的な手順となります。
①被相続人の預貯金の引き出し(口座停止に備え、相続人全員管理で必要額を引き出します)
②死亡診断書の受け取り(火葬許可申請・年金・生命保険)
③死亡届の提出(市役所等)
④遺言書の確認(公正証書遺言による場合、相続人の合意で不動産の名義変更)
⑤お通夜・葬儀(被相続人の葬儀費用の計上)
⑥年金受給者死亡届(所得税源泉徴収の準確定申告)
⑦相続人の印鑑証明書(有効期間3カ月に注意)
⑧役員変更(被相続人の退任手続きは原則14日以内の登記、2カ月猶予後は過料)
⑨相続放棄の確認(3カ月以内)
⑩遺言執行(遺言執行者に財産管理や執行の権限あり)
⑪相続税の申告・納付の計算(相続開始から10カ月以内)

認知症になった配偶者が相続しなようにするにはどうすれば良いですか?

法定相続の場合は、認知症の相続人に対しても法定相続分が相続されます。
遺産分割協議を行う場合には、認知症の相続人に後見人を選任して協議を行うことになります。
認知症になった配偶者が相続しなようにするには、遺言により財産の分割方法を指定し、遺産分割をせずに当該財産が遺言により指定された取得者に帰属するようにします。
したがって、このような財産については、認知症となっている相続人との間で遺産分割手続きをする必要はありません。

不動産を法定相続で分けようと思いますが、相続人のうち一人で相続登記の申請ができますか?

法定相続による共有持分で不動産を分けようとする場合、相続人のうち一人でも相続登記の申請はできます。
ただし、相続登記申請者にしか法務局の登記識別情報通知(登記法改正前の登記済権利証にあたる書類)が発行されません。よって、他の相続人には権利証にあたる登記識別情報通知が無い状態になるため、その不動産を売却して所有権移転登記する場合に本人確認制度が必要となり司法書士の費用が余分にかかります。
もっと大きな問題は、相続の過程において遺産分割協議をスムーズにできなかった場合、相続登記ができたとしても不動産売却の承諾や、登記費用・固定資産税等の負担等共有者間で合意ができないと問題を先送りしただけになるばかりか、他の相続人から家庭裁判所への調停や審判に持ち込まれた場合、登記のやり直し(錯誤)になる可能性があることです。

上記以外の不動産・相続に関する疑問・質問も各分野ごとにお答えしています。
ぜひ、ご覧ください。

皆様からのお悩みやご質問を、「お問い合わせ」から受付いたします。
後日、携帯電話080-1624-9757またはメールで回答いたします。